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「山岳温泉にめざめ、飛騨デザインに寛ぐ宿」をテーマとした岐阜県にある星野リゾートの温泉旅館「界 奥飛騨」に、俳優でフォトグラファーの染谷ノエルが訪問。そこでの体験を2回にわたってレポートします。1回目は豊富な湯量の名湯を楽しめる大浴場や足湯、飛騨牛をはじめとした食材や「朴葉つと焼き」などの郷土料理をご紹介。「界 奥飛騨」の魅力をたっぷりとお届けします。
「界 奥飛騨」は、3,000m級の飛騨山脈(北アルプス)のふもと、日本屈指の湯量を誇る奥飛騨温泉郷の入り口に位置する平湯温泉にある温泉旅館。豊富に湧き出る温泉を、大浴場や客室露天風呂、足湯で存分に楽しむことができます。
屋内外とも木が重要な役割を果たしている空間は、とても居心地が良く、あたたかみがあります。建物は、「湯の川」の流れる中庭を中心に、東西に分かれた客室棟と大浴場がある本館、そして離れ棟の4つ。
その昔、この地域の温泉街には“共同浴場に歩いて出かける”という習慣があったことから、滞在中に外をめぐり歩いてほしいという思いで、辻空間を中心に各棟が配置されているそう。山あいの新鮮な空気や風を感じながら温泉に浸かり、飛騨地域の伝統技術や文化、食に触れ、ゆったりと過ごす滞在が提案された宿です。
新宿や松本方面の高速バスや路線バスの発着所である、平湯バスターミナルからは徒歩で3分、と好アクセスなのもポイント。
界 奥飛騨の公式サイトをチェック >湯小屋は東西の客室棟の間にあり、雄大な山々を背景に、自然に馴染む外観。
可愛らしいデザインの暖簾をくぐって大浴場へ向かいます。暖簾のデザインモチーフは、4つの湯けむり。「界 奥飛騨」にある4つの棟から連想したものだそう。
内風呂には、源泉かけ流しの「あつ湯」と、心身ともにリラックスできる「ぬる湯」があり、三種の源泉から引いた混合泉で、お湯は透明。泉質は中性で、メタけい酸とメタほう酸を多く含んだ、肌にやさしいお湯です。
露天風呂やあつ湯で温まった後にぬる湯に入ると、とても気持ちが良い。奥飛騨温泉郷全体には100以上の源泉があり、さまざまな泉質を楽しめます。「界 奥飛騨」のお湯は、それらの外湯を巡った後に入って、癒しの効果が期待できる「治し湯」としても最適なんだとか。
内風呂の天井には、飛騨の流れ星をイメージしたライティングが施され、昼と夜で違った雰囲気を楽しむことができます。
露天風呂は、白い壁に囲まれ、天井部分にぽっかりと四角く穴が開いているのが特徴。奥飛騨の豪雪地帯によく見られる、雪の回廊をモチーフにしたデザインになっています。実際に、この壁くらいの高さまで雪が積もり、それはもう圧巻の景色だそうです。とても美しく、まるで美術館に入ったような感覚に。
天気の良い日には、日中は青空を望み、夜には、空気が澄んだ空に星が光り輝くのを見上げることもできます。大きなかまくらの中にいるような感覚になったり、夜には立ち上る湯気とともに、自分自身も大きな穴に吸い込まれていきそうな気分になったり、新感覚の体験ができます。
4つの棟に囲まれた中庭からは、飛騨山脈とは逆側にある、輝山(てらしやま)という、朝日に照らされ輝くことから名付けられた山を望むことができます。飛騨山脈は尖った部分が多いイメージですが、輝山はなだらかで可愛らしい印象。
「湯上がりテラス」には、テーブルとイスが置かれ、湯上がりドリンクを飲みながら輝山を眺める、くつろぎの時間を過ごせます。中庭も湯上がりテラスも特に朝が人気だそうで、長時間いてしまう人も多いんだとか。
中央を流れる「湯の川」から湯気が立ち上る「中庭」、東館と湯小屋の間を通り敷地外へ繋がる「路地」、湯小屋への通路と路地が交差する「辻空間」。これらの回遊空間は「山の空気を感じながら巡り歩いてほしい」、「ここでの滞在をきっかけに、山岳地の温泉郷が持つ心地良さに気づいてもらいたい」という思いで作られています。さらに、夜になると、路地には行灯にほのかな明かりが灯り、日常とは違う空間に誘います。
大きくそびえる飛騨山脈の山々、現在も活火山として知られるアカンダナ山を望みながら、ゆっくりと源泉かけ流しの足湯に浸れる、贅沢スポットの「中庭足湯」。目の前には、中庭を流れる「湯の川」。
奥飛騨温泉郷の日本屈指の湯量を感じさせる湯けむりが漂います。湯の川の飛び石をはじめ、中庭や木塀の土台の石は、この地に元々あったものを使用していて、この地の風景に溶け込んでいます。
中庭は地域の自生種が植えられていて、春には咲き乱れる花々、夏には緑と青空、秋には紅葉、冬には雪景色とともに足湯を楽しめます。取材時には「ナナカマド」という植物が赤い実をつけていてかわいらしかったです。
雪が深くなる時季には、期間限定でライトアップが開催される予定とのこと。季節ごとに再訪するのが楽しみになります。
「界 奥飛騨」では、目の前の雄大な山々と温泉の繋がりを学べる「温泉いろは」が実施されています。湯守りが温泉にまつわるさまざまな情報を解説してくれ、途中、クイズをまじえながら楽しく教えてくれます。
会場の中庭に面した足湯の湯口では、白い猿が私たちを見守っています。これは「白猿(はくえん)伝説」に登場する猿で、武田信玄がこの地を攻めた際、疲れ切った兵士の前に現れ、温泉に導き助けたという伝説の白い猿です。
近くの平湯神社では、参拝者に温泉をかけることで無病息災を祈るという祭事があるそうで、「界 奥飛騨」でも霧吹きで吹きかけてくれました。
湯量や温度、泉質についてのクイズのあと、「鶴の湯」という源泉へ案内をしてくれました。温度はクイズにも出た98度、その高温を活かして、温泉卵が作られています。
泉質に塩化物泉が含まれているため、ほんのりと塩味が利いた温泉卵に。実際に食べると、とても美味しい!
「界 奥飛騨」の近くには古くからの旅館も多く、地元の旅館との繋がりも大切にしているそう。
湯上がり処には、飛騨の伝統技術である曲木を使った椅子が置かれています。「飛騨春慶」塗りをイメージした色味の、木の温もりを活かしたライトとともに、湯上がりの体をさらに癒します。
椅子スペースの奥には、畳のスペースも。畳の上で寛ぐと、窓から飛騨山脈の山々を望むことができます。
畳のスペースでは、龍のクッションが真っ先に目に入ってきました。こちらも飛騨の伝統技術「飛騨染め」という染め物で、春と秋に行われる高山祭など飛騨の祭り衣装も飛騨染めだそう。
飛騨染めは、雪の上に布をさらし、干すことにより色鮮やかになるのが特徴。この龍も、祭り衣装の伝統的な絵柄で、迫力満点です。
「界 奥飛騨」のご当地部屋は、天然木のやさしさや飛騨の魅力が引き出されたデザインの「飛騨MOKUの間」。西館の最上階には2室限定の特別室があります。部屋に入ると真っ先に目に飛び込んでくるのは、曲木をモチーフにしたベッドを覆うようなヘッドボードです。
飛騨地域に自生する4種類の広葉樹が使用されていて、木の色合いが少しずつ違い、それぞれの表情や温かみを感じることができます。ベッドはしっかりと身体を支えながらも、ふわっとした寝心地で、肌触りの良いシーツとピローケースで極上の眠りへと誘われます。
壁には、飛騨高山の伝統的な漆塗りである「飛騨春慶」による装飾が施されています。つるんとした質感と鮮やかな彩色が特徴的。年月を経ていくごとに、どんどん木目が浮き上がって見えるのだそう。
そして、ひと際目を引くのは、部屋の中央にある紅色のローテーブル。飛騨春慶をイメージした色味が映えます。客室全体に統一感があって落ち着く空間です。
宿泊した部屋の窓からは、中庭を見渡せます。奥には足湯や他の旅館なども見えて人々が行き交う様子や温泉郷全体の雰囲気を味わうことができます。窓ガラスの一面張りがあるのは、この特別室のみ。
特別室だけの設え、もうひとつは曲木で作られたロッキングチェア。曲木の技術は人間工学に基づいているそうで、長時間座っていても疲れず、包み込まれるようです。木に触れながら寛ぐのにぴったりで、自宅にも欲しくなりました。お風呂に入ったあと、ゆらゆらと揺れながら読書をしたら、きっと素敵。
そして、露天風呂!大浴場だけでなく、お部屋の露天風呂でも温泉が堪能できます。濡れたまま座れる、撥水性のデイベッドも備え付けられているため、足湯のように浸かったり、入浴前後にそのまま寝転がったりできます。窓のルーバーの角度を変えることで開放感を味わえます。
朝日が入る時間帯は、光がお湯に反射して、とても美しく、なんとも言えない幸福感に包まれます。この瞬間のこの景色は独り占めできるんだ!と贅沢な気分に。
飛騨の広葉樹で作られた、客室の鍵のキーホルダー。手に馴染む形で、手にすると木の温もりが伝わってきます。
露天風呂付き洋室は、ヘッドボードが壁一面を覆っています。ベッドに横になると、よりいっそう、木に包まれて眠る感覚に。
露天風呂も広々としていて、家族でもゆったり入ることができます。
日の光の入り方がとても美しい露天風呂。こちらの露天風呂もデイベッドが備え付けられていて、ゆったりと入浴時間を過ごすことができます。
1名専用の客室ながら、広々とした空間にソファーやダブルベッドの設えでゆったりと寛ぐことができる、プライベート空間。こちらの客室も特別室や洋室同様、曲木をモチーフとしたヘッドボードが印象的で、飛騨の木工技術が随所に感じられます。
窓の外には山々の景色が広がり、岐阜県最高峰の笠ヶ岳を望むことができます。窓からは明るい光が射し、居心地の良い空間です。
長めのカウンターテーブルと椅子により、ワークスペースも確保。癒し旅やレジャーだけでなく、ワーケーションにもぴったりです。シャワールームとお手洗いが別なのも、嬉しい。まだまだ温泉旅館でのひとり部屋は珍しい中、ひとり旅を歓迎してくれているように感じました。
半個室の食事処でいただく夕食は、肉質がきめ細やかで豊潤な味わいが特徴の飛騨牛を、朴葉とともに味わう特別会席。
最初に、奥飛騨らしさを象徴する囲炉裏をイメージした盛り付けの先付けと共に、山彦人形という開運魔除けのお守りが運ばれてきます。この辺りは山の恩恵で栄えた地域のため、山々に敬意を払うという意味で、先付けの演出のひとつとして用意されています。
先付けは「すったてと牛しぐれ」。赤い器は、囲炉裏の炎をイメージしているそう。「すったて」とは、大豆や野菜をすったもの。地域の人が、森林や畑での作業の合間に食べていたことが由来だとか。
つづいてのお椀「南京のすり流し」は、大根餅の揚げだしや蟹棒、花麩が盛り付けられています。
八寸、お造り、酢の物がさまざまな器に美しく盛り付けられた「宝楽盛り」。囲炉裏端をイメージした古材を使用した盛り付け台に器が並びます。
揚げ物は、手前右手が「白子豆腐の包み揚げ」、左手が「たたき海老の新挽き揚げ」。奥にあるのは、椎茸と茗荷の天婦羅です。
煮物は「蕪と塩鱈の饅頭」。山葵のアクセントが利いています。
メインの台の物は「飛騨牛の朴葉つと焼き」。“つと”とは葦や竹の皮、藁などを束ねたり編んだりして、食材を包んで持ち運べるようにしたものです。
あらかじめ表面に焼き⽬をつけた、ヒレとロースの二種類の飛騨牛をつとから取り出し、焼き台に焼き付けて好みの焼き加減で味わいます。ミディアムくらいに焼き上げて、山葵をつけていただきました。
塩、⼭葵、漆⿊醤油(たまり醤油)、飛騨の実⼭椒などの調味料や薬味で、変化を楽しむのもおすすめ。付け合わせの素揚げ野菜には、朴葉味噌を絡めていただきます。
甘味は焼き目のついたマシュマロに、みたらしをかけていただく「みたらし真珠麿(マシュマロ)」。
焼き網の下には、炭に見立てた黒胡麻のアイスと竹炭のクランブルが。遊び心のあるスイーツに心が躍ります。マシュマロにみたらしをかけて食べたのは初めてでしたが、濃厚なみたらしと、ほのかな香ばしさの焼きマシュマロが、とてもマッチしていてお気に入りの一品に。竹炭のクランブルも歯応えがあり、美味しかったです。
今回は、ご当地部屋「飛騨MOKUの間」や大浴場など施設の情報をたっぷりとご紹介しました。
「界 奥飛騨」で体験できるアクティビティを紹介した記事も、併せてチェックしてみてくださいね。
界 奥飛騨の予約はこちらから! ><住所>〒506-1433 岐阜県高山市奥飛騨温泉郷平湯138
<TEL>050-3134-8092(9:30〜18:00)
<駐車場>あり
<車>中部縦貫自動車道「平湯IC」からから約5分/JR「高山駅」から車で約45分
<電車・バス>平湯バスターミナルから徒歩で3分
※この記事は2024年10月の取材内容に基づき執筆されています。時期により、イベントや食事などの内容が変更になっている可能性があります。詳細は「界 奥飛騨」にお問い合わせください。
星野リゾートの温泉旅館「界」をチェック >染谷ノエル(Noel Someya) / 俳優・フォトグラファー
東京都出身。演劇を学ぶため中学卒業後に単身渡英し、ノーサンプトンのBosworth Independent Collegeなどに通う。4年半後に帰国、上智大学にて英文学を専攻。在学中より劇団、東京ジャンクZに所属、舞台俳優のキャリアは15年目を迎える(2023年時点)。写真は留学中、"Photography"の授業がきっかけで本格的に取り組むようになった。旅や日常をドラマチックに切り取る表現を得意とし、雑誌やWEBメディアなどでの作品掲載多数。 撮影、執筆、被写体の三役をこなすキャリアを活かし、取材、連載などでも活躍する。
Twitter: @noel_engeki
Instagram: @noelle.s12
STAFF
Photo&Writing:Noel Someya
Edit:michill編集部
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