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夏の終わりから秋のはじめに収穫されたブドウを仕込み、短い醸造期間ですぐに販売されるのが、新酒ワインです。新酒ワインといえばボージョレ・ヌーヴォーがおなじみですが、他の国にも色々な新酒ワインがあります。せっかくですから、この時期ならではの各国の新酒ワインも楽しみましょう。
フランスのブルゴーニュ地方ボージョレ地区のフレッシュな新酒ワイン「ボージョレ・ヌーヴォー」は、すっかりおなじみになりました。解禁日は11月第3木曜日と決められていますので、2017年は11月16日(木)になります。
ボージョレ・ヌーヴォーは、解禁日の午前0時前の販売は絶対禁止です。そのため、真夜中にカウントダウンする解禁イベントがニュースで取り上げられているのを見たことがあるのではないでしょうか。解禁を迎えたショップや百貨店のワイン売り場にヌーヴォーがずらりと並ぶ様は、すっかり秋の風物詩になりました。
日付変更線の関係で、日本が世界で一番早く解禁日を迎えること、新しいもの好きで季節感があるものを好む日本人には、ボージョレ・ヌーヴォーはツボにはまるワインでした。ボージョレ・ヌーヴォーの約50%が日本に輸出されていることからも、その大好きぶりがわかります。普段はワインを買わない人も、なぜかこれだけは買ってしまうとか(笑)。
ボージョレ・ヌーヴォーは、ガメイというブドウ品種から造られるフレッシュな赤ワインです。近年はロゼワインも登場しています。「今年は100年に一度の当たり年」といった前評判や、どこまで価格が下がるか?など、話題に事欠かないボージョレ・ヌーヴォーですから、解禁日にはついついワイン売り場を覗いてしまう人も多いのではないでしょうか。ノンフィルタータイプ、プレミアムタイプ、生産者によっても、さまざまなヌーヴォーが造られていますので、選ぶのに一苦労ですが、それもヌーヴォーの楽しみのひとつでしょうか。
ボージョレ・ヌーヴォーはボージョレ地区の新酒ワインですが、新酒ワインは他の国にもあります。
イタリアの新酒ワインは「ヴィーノ・ノヴェッロ」(通称ノヴェッロ)と呼ばれ、毎年10月30日に解禁となります。以前の解禁日は11月6日でしたが、2012年から10月30日に変更されています。
ノヴェッロはイタリア全土20州で造られ、各地それぞれのブドウ品種を使うため、白ワインもあれば、ロゼワイン、赤ワインもあり、味わいが非常に多彩なのが特徴です。パーティーなら、20州すべてのノヴェッロを並べてみるのもいいですね。
日本のイタリアンレストランなどでは、このノヴェッロを提供する店も多く、百貨店の秋のワインフェアにもよく並んでいますので、見たことがある人も多いのではないでしょうか?ラベルに書かれている「Vino Novello」、または「Novello」の文字をチェックしてください。バラエティ豊かで、お手頃価格からあるのが、ノヴェッロのお勧めポイントです。
ここ5年ほどの間にじわじわと名前が出るようになってきたのが、オーストリアの新酒ワイン「ホイリゲ」(Heuriger)です。ホイリゲの解禁日は、毎年11月11日と決まっています。11月11日は牧童や農家の守護神である「聖マルティン(聖マーティン)の日」であることから、この日を新酒「ホイリゲ」の解禁日としています。
ホイリゲワインは、グリューナー・ヴェルトリナーというブドウ品種を中心に、他のいくつかのブドウ品種を混醸したゲミシュターサッツと呼ばれる白ワインが伝統的です。近年は赤のホイリゲも出てきました。いずれも、フレッシュで、軽やかで、いくらでも飲めてしまい、さまざまな料理に合わせられるのがホイリゲの魅力です。
ホイリゲには、「ワイン居酒屋」の意味もあります。ウィーン郊外にはホイリゲが軒を並べる地区があり、地元民にも観光客にも人気です。私もウィーンに出かけた際に、ホイリゲをハシゴしてきました。大半のホイリゲはワイナリー直営で、店の中庭に設えられたテーブルで自家製の色々なワインを飲むことができます。春から秋の季節に、中庭で心地よい風を感じながら楽しむワインは最高です。新酒の時期なら、出来立てのホイリゲワインは外せません。
なお、ホイリゲの解禁日は、正確には“11月11日11時11分”だそうですが、こちらは厳格ではなく、ある程度のフライングも許されていると聞きました(笑)。
今年のボージョレ・ヌーヴォーの解禁日となる11月16日には、イタリアのノヴェッロもオーストリアのホイリゲもすべて揃いますので、3か国の新酒ワインを並べて飲み比べするのも面白いのではないでしょうか。ハーフサイズボトルが出ているものもあるので、二人で楽しむなら、ハーフサイズであれこれ揃えるのも賢い選び方です。
また、店頭でピピッと来たワインを買うのも楽しいですが、気に入った同じ生産者のワインを毎年買い続ける人もいます。同じ生産者のものを毎年2本ずつ買い、1本は飲まずに保管しておき、翌年に2年分を並べて飲み比べするのもオススメです。お気に入りの生産者を見つけるためには、当然といえば当然ですが、数をたくさん飲んでみるしかありません(笑)。
この時期、樽出しの新酒ワインを提供するレストランもあります。そうした店に週末に2人で出かけ、早い時間からゆっくりと楽しんでみるのもいいかもしれません。
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この記事のライター
綿引まゆみ
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ワインジャーナリスト。ワイン専門誌「Winart」をはじめ、料理系雑誌、ライフスタイル誌、出版系webサイトなどで、ワイン、食、旅に関する記事を執筆。ワインセミナー講師、トークショー、海外のワインコンクール審査員を務めるなど、幅広い活動を行なっている。チーズプロフェッショナル、ビアソムリエ、コーヒー&ティーアドバイザーの資格も所有。
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