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完璧な家事、効率的な仕事ぶり、充実したプライベートの女性はTVドラマの中にしか存在しません。600社以上のコンサルティングに携わり、活躍する女性を見てきた人事コンサルタントの松本利明さんが教える、家事も仕事も完璧を目指して疲れ果てた兼業主婦が「仕事をがんばる気持ちを持ち続けるためのコツ」とは!?
夫がたまに「男の料理」をつくろうとすると、料理をしている時は他のことには全く手がつかなくなりますが、奥さんは掃除、洗濯、料理などを同時並行でパパパッと進めます。
これは、男性脳と違い、女性脳はマルチに同時並行で物事を進めることが得意だからです。
しかし、ここに罠があります。
夫あるある「料理はしても片付けは苦手」のように、男性脳は好きなことに集中する反面、それ以外は平気で手を抜けますが、女性脳は同時に物事を進められる上、全てに完璧を求めがちです。
女性は家事と仕事、プライベート、全てを完璧にこなそうとし、こなせないと逆に申し訳ないと自分を責めてしまい、肉体的にも精神的にもヘトヘトになってしまうものなのです。
家庭も仕事も完璧!という兼業主婦は虚像でしか存在しないと考えましょう。
完璧のようにみせていても実は、夫が…義母が…子供が…など実は問題が山積み!という本音を、私は800名を超える女性のキャリア相談の中で聞いてきました。
だから言えるのです。「完璧な兼業主婦」はキャラ設定と割り切れます。
しかし、そうは言っても、「家庭も仕事も理想通り完璧にしないと自分が嫌だ」という女性の本音もよくわかります。
「誰が」ではなくそうできない「自分が」許せなくなるのですよね。
そして、自分が大変な思いをして完璧を目指しているのに、夫が約束をほったらかして飲んで帰ってきたり、洗濯ものを取り込んでおかなかったりすると「なぜあなたも同じように協力してくれないの!」と怒りたくなる気持ちもよくわかります。
そして、怒った自分が嫌で自己嫌悪に陥って、メンタル不調になることもよくあることです。
でも、ちょっと考え方を変えてみてください。
完璧の反対語は手抜きではありません。「バランスが取れている」ということです。
全てに力を入れて「完璧」にするのではなく、「力を入れる所」と「抜ける所」をおさえた、バランスのいい状態を目指せばいいのです。
「時間になったら潔く帰る!就業中は人一倍精一杯働く!」というように、思い切って割り切ってみたら、意外と大丈夫だった!という「割り切り所」をたくさん仕入れ、職場と家庭に取り入れていくと、肉体的にも精神的にもラクになります。
お手本となりそうな社内の先輩、著作があり講演もよくしている「素敵」と思える先輩からキャリアや家庭マネジメントの話を聞いても実は役立たないことが多いので注意が必要です。
「朝3時に根性で起きて仕事をしてきた!」など、確かにスゴイけれど、絶対にマネしたくない、ああはなれない、となるのが本音だからです。
夫の性格や仕事、夫の実家や義母との関係など、働く女性たちを取り巻く環境に全く一致する例はなく、人それぞれであることも大きく影響します。
先輩や識者の人たちが得てきたような協力が得られたり、彼女たちの旦那が稼いでいるほど自分の旦那が稼いでくるとは限らないのです。
識者や先輩から聞いて意味があるのは「どう乗り越えてきたか」です。
どんな苦労が起きた時、どう乗り越えてきたかという例をたくさん仕入れ、自分の状況に置き換えて、使えるモノを使えばいいのです。
識者の場合、成功した後に昔の苦労をストーリーとしてまとめ、整理されるケースが大半なので、時代感がズレたり、しみじみ感が薄く、ある意味極端な失敗談と成功談に流れがちです。
ロールモデルや憧れるような凄いワーキングウーマンよりも、あなたの周りにいる5年位先輩から聞く話のほうが現実感、しみじみ感、納得感がでます。
彼女たちは今あなたが悩んでいることを乗り越えてから数年しか経っていないので、記憶がハッキリしているし、時代環境も今と近いからです。
ロールモデルは一人に限定することはありません。3~5名、いろいろな先輩方から、苦労を乗り越えてきたアドバイスを聞き、その中から自分に合った手段を選ぶといいでしょう。
特にこれからお子さんを持とうと思っている方や、今お子さんのいる方は、過去記事にも書きましたが、東京ワーキングママ大学、育休プチMBAなど、運営団体が非営利で、キッズスペースがあり、子供連れでも学びあい、語り合える場に参加してワーママの知り合いの輪を広げるのが実は一番はやく、楽で堅実な方法ですのでお勧めします。
もうひとつ、兼業主婦を追い詰めるのは周りに申し訳ない「ごめんなさい」という気持ちです。
ここはいい意味で文字変換しましょう。「ごめんなさい」ではなく「ありがとう」に切り替えるのです。
「定時なのにみんな忙しそうに仕事している。一人で先に帰って、『ごめんなさい…』」から「定時に帰らせてくれて『ありがとう』。その分就業時間中は精一杯働きます!残業していた頃くらいのパフォーマンスは出せるように工夫します!」というように、「ありがとう」をつけると、区切りをスパっとつけやすい上、会社に貢献する方向に意識と行動が向かうので、心も前向きになります。
職場は最終的に帳尻が合えばいいのです。
職場で帳尻をあわせるため、「限られた時間でどう関わればみんなに喜んでもらえるのか。」を考え、実践すれば、「ごめんなさい」という気持ちが思い過ごしだったことに気づくでしょう。
ぜひ、トライしてみてください。今抱えている気持がラクになることうけあいです。
この記事のライター
松本利明
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人事コンサルタント。東京ワーキングママ大学アドバイザー。PwC、マーサー、アクセンチュアなどの外資系人事コンサルタントを経て現職。日系、外資系の大手から中堅企業の600社以上の人事プロジェクトに従事。5万人のリストラと6千人のリーダー選抜に関わる人事の目利き。人事の裏を知る視点からのキャリア論がオリジナルで好評。特にワーキングママ向けのキャリア・アドバイスの講座は常に満席。寄稿、出版、講演多数
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