/
世界には色々なワインがあります。花の香りがするワイン、ベリーの香りがするワイン、ブリオッシュの香りがするワインetc…と、このあたりは想定内ですが、え?!と驚くほどコーヒーの香りがするワインがありました。口にすると、ますますコーヒーの風味を強く感じます。これは面白い!
ワインジャーナリストとして、世界各国のワインを色々と飲んできたつもりの私ですが、世の中にはこんなワインがあるのね~と感心させられたのが、こちらの3本のワインです。
3本のワインの共通点は、南アフリカ共和国産で、コーヒーの風味がすること。
1本目との出合いは、2年ほど前だったと思います。輸入業者のワイン試飲会に出かけたところ、エチケットラベルは普通ですが、名前を見て、なにこれ?と思ったワインがありました。
Café Cabernet Sauvignon Linton Park Wines
「カフェ・カベルネ・ソーヴィニヨン」は、南アフリカ共和国パール地区の赤ワインで、カベルネ・ソーヴィニヨンからつくられています。試飲してみると、コーヒーのアロマがあり、味わいの中に燻したニュアンスとコーヒーの風味がありました。まさか、コーヒーを添加しているわけではないでしょうね?
聞けば、もちろん、コーヒーなど入っていないとのこと。味わいは濃く、ガツンとした力強さがあり、飲みごたえがあります。これは個性があって面白い!
カカオやコーヒー、チョコレート、バター、ヘーゼルナッツといったニュアンスを感じるワインは普通にありますから、その中のひとつの風味が特に強く表現されるワインがあっても不思議ではありません。
南アフリカ産の赤ワインには、独特のスモーキーさや土っぽさ、香ばしさを感じることがよくあります。こうした風味は、樽から来ることが多いのですが、その土地の環境(土壌、空気、水など)から来ることもあり、南アの場合は後者の影響があるように思います。
例えば、オーストラリアのワインにはよくユーカリの風味が感じられます。それは、周囲に植えられているユーカリの香り成分が空気中に放出され、それがブドウに付着するためといわれます。南ア独特のスモーキーな風味も、環境から来る何らかの影響を受けているのかもしれません。
それでも、「カフェ・カベルネ・ソーヴィニヨン」は、どこか特殊なワインだと思っていました。ですが、その翌年、また別のコーヒー風味のワインと出合いました。
VAN ZIJL COFFEE PINOTAGE Special Release Imbuko Wines
南アフリカの西ケープ州の赤ワイン「ヴァンジール・コーヒー・ピノタージュ」です。ピノタージュは南ア独自のブドウ品種で、ピノ・ノワールとサンソーの交配種として1925年に誕生しました。早飲みのフレッシュなタイプから、樽で熟成させるタイプまであり、独特のスモーキーなアロマが特徴です。私は、いつも煙っぽさ、土っぽさをピノタージュに感じます。
1本目のカフェ・カベルネと比べると、コーヒー・ピノタージュの方がコーヒー風味は軽やかで、タンニンのキメが細かく、タッチがデリケートです。カベルネとピノタージュというブドウ品種の差もあるかもしれません。
エチケットラベルにコーヒー豆が描かれていて面白く、これもなかなかユニークでおいしいワインだよね…と思いましたが、先日、3本目を発見してしまいました。
BARISTA PINOTAGE Barista Wine
南アフリカ西ケープ州の「バリスタ・ピノタージュ」。生産者のバリスタ・ワインは、コーヒー風味のピノタージュの技術に長け、“スターバックス”というニックネームまで獲得したとか。
このピノタージュも、しっかりとコーヒー風味があります。若いヴィンテージ(2017年)なので、フレッシュな酸味もあり、とてもおいしい!
1本目のワイン「カフェ・カベルネ」と同じ輸入元なので、担当者の方に「コーヒー風味のワインって、南アで流行っているんですか?」と尋ねると、「カフェ・カベルネが人気で、在庫がなくなり、入荷待ちの状態なので、このバリスタ・ピノタージュを新商品として入れました。コーヒー風味のワインは、今、南アでブレイクしているみたいです」とのこと。
いずれのワインも、そのまま飲んでおいしいですが、フードとのマリアージュもぜひ探ってみてください。
まず間違いないのが、チョコレートとの組み合わせです。
ラムレーズン入りのチョコ、洋酒入りのチョコレートボンボンなどをつまみながら飲むと、甘美なマリアージュが楽しめます。チョココーティングしたレーズン、コーヒー豆の形をしたコーヒー風味のチョコなんかも楽しいですね。
リキュール風味のチョコレートプリン「ボネ」もオススメです。
料理なら、噛みごたえがあってジューシーな鴨肉のローストに、甘みがある濃厚なベリーソースをかけた一皿はいかが?
ピッツアと合わせて気軽に、というのも悪くありません。
今回紹介した南アフリカ共和国は、世界10位までに入るワイン生産国です。日本市場でも、2014年には世界第8位にランクインし、スーパーのワインコーナーでも、南ア産のワインはよく見かけます。
日本からは地球の反対側に位置する遠い国ですので、どんな国なのかあまり知る機会がありませんが、ユネスコの世界遺産に認定されている美しい場所が多くあります。その世界自然遺産の中に存在するワイン産地もあります。そうした美しい自然環境の中で、南アフリカのワインはつくられています。
南アのワインは知られるようになってきましたが、コーヒー風味のワインは、日本ではまだマイナーな存在だと思います。ですが、色々なエピソード満載のワインですから、秋の夜長、食後にまったり、ダンナさまと一緒に、という時にぴったりです。しかも、3本のワインの価格は、いずれも2000円以下とくれば、試さない手はありません。
女子会などに持参して、皆を驚かせるのも面白いですね!
輸入元:株式会社スマイル(カフェ・カベルネ・ソーヴィニヨン、バリスタ・ピノタージュ)
輸入元:JSRトレーディング株式会社(ヴァンジール・コーヒー・ピノタージュ)
この記事に関連するキーワード
この記事のライター
綿引まゆみ
164
ワインジャーナリスト。ワイン専門誌「Winart」をはじめ、料理系雑誌、ライフスタイル誌、出版系webサイトなどで、ワイン、食、旅に関する記事を執筆。ワインセミナー講師、トークショー、海外のワインコンクール審査員を務めるなど、幅広い活動を行なっている。チーズプロフェッショナル、ビアソムリエ、コーヒー&ティーアドバイザーの資格も所有。
グルメ・おでかけの人気ランキング
新着
カテゴリ
公式アカウント